給料に対しての差し押え

給料に対しての強制執行とは、文字通り給料を差し押さえる事です。この給料には、給料・給与・賃金・役員報酬・バイト代など、ありとあらゆるものが含まれます。もちろん、賞与・ボーナスも差押え可能です。

この給料に対しての差押えですが、月々払いの養育費婚姻費用であれば、滞納が起きてから強制執行手続を取ると、それまでの分だけでなく、これからの分まで、毎月給与天引きという形で、あなたの口座に振り込んでもらえるようになりました。

という点も考慮すると、給料ほど差押えしやすいものはありません。

とはいえ、最低限度の生活は保障されないといけないために、給料を全額差し押さえることはできず限度があります。で、どれだけ差し押さえできるかというと、給料総額から税金と社会保険料と通勤手当を差し引いた金額の4分の3が差押え禁止になっています。

つまり、4分の1が差し押さえできるわけです。ただし、養育費や婚姻費用は2分1まで差押えできます。

また、給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の4分の3が33万円を超える場合は、33万円が差押えできない金額になります。

例として、税金と社会保険料等を引いた金額が48万円あるような高所得者であれば「48×4分の3=36万円」ということは33万円を超えます。なので、「48-33=15万円」で、給料の4分の1以上を差押えすることができます。

慰謝料などの差押えは以上のような考え方になります。

ちなみに、役員報酬に対しての差押えには限度がなく、全額(社会保険料等は除く)差し押さえることができます。

給料に対しての強制執行の方法

給料・給与に対しての差押えの方法としては、調停調書などの執行文の付いた債務名義や債権差押命令申立書などの必要書類を用意して、相手の地方裁判所の執行係に申立をします。

強制執行の申立の費用は、収入印紙で支払いますが、何を差し押さえるかによって変わってきます。なので、尋ねたほうがいいでしょう。

もう少し、詳しく書きますと、まず、調停調書や公正証書などの債務名義に執行文を付与してもらい送達証明書を出してもらいます。執行文の付与とは、分かりやすくいうと「強制執行できる」と記載された紙を債務名義に付けてくれることです。

どこでそれをするかというと、公正証書では、作成した公証役場で執行文の付与送と送達証明書を発行してくれます。
調停調書は、成立した家庭裁判所になります。

家庭裁判所の場合は、郵送でも執行文の付与と送達証明書を発行してくれます。
公証役場は、直接行くか、代理人に手続をしてもらう必要があります。
どちらにせよ、あらかじめそれぞれの窓口に必要なものを聞きましょう。

送達証明書というのは、相手の手元に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類になります。公正証書の場合だと、公正証書を作成した時に、同時に送達する公証人もいるようですが、基本的には後日手続をする必要があります。

この送達証明書を発行する手続をとると、相手方に債務名義の謄本が特別送達で郵送されますので、これだけでも心理的圧迫を与えることができ、養育費などは支払いを再開するケースもあります。

この送達証明ですが、相手が今はどこに住んでいるか分からない場合は厄介です。こういう場合は、相手の本籍地の市区町村役場で相手の戸籍の附票というものを取れば住民票所在地は出てきますが、若干ややこしいので、相手の住所が分からない場合は、専門家に依頼か相談する方がいいでしょう。

ということで、相手の住所は常に把握しておくか、あらかじめ送達証明と執行文の付与は済ませておくのがいいでしょう。

次に強制執行手続申立書類一式の作成をします。

 債権差押命令申立書
 請求債権目録
 差押債権目録
 当事者目録

の4つが自分で作成する書類になります。

債権差押命令申立書は、裁判所に滞納されたから差押えして下さいという内容の書類です。要するに、これがメインの申立書になります。メインといってもたいていは1枚物です。

請求債権目録は、今回差し押さえる滞納分の金額と申立にかかる費用の明細を記載した書類になります。

差押債権目録は、差押しようとしている給料やボーナスなどを記載した書面です。

当事者目録は、債権者・債務者が誰で、給料を支払っている会社の今回の差押え先である第3債務者を記載した書面です。

この4つを作成すればいいのですが、なんかとっても難しそうな感じがすると思います。

ですが、そんなことはありません。給料や賞与を差し押さえるのであれば、書式は、大体の型はあるので、必要なことを記載していくだけです。そして、どの書類も基本的には1枚物です。
唯一のルールとしては、A4の用紙で作成するということでしょうか。

で、具体的にどんな書式になるのか?
その雛形やサンプルは?

ホームページ上では記載しにくいので、以下のような本を購入してください。
それには、強制執行とはということや、必要書類の作成の仕方や書式まで載っていますので、1冊購入して書類を作成してみてください。

ただ、そこまで詳しくは載っていないので、とりあえずできたものを地方裁判所の執行係窓口に持って行って相談してください。

たまには偉そげな人もいますが、基本的に親切に教えて訂正してくれます。
それを踏まえて修正し強制執行の申立をすれば、弁護士や司法書士に頼まなくても、1人でなんとか給料や預貯金であれば差押えすることができます。

これで、ン万円も浮きます。司法書士はともかく弁護士に頼めばトータルで20万くらいは当たり前に取られますので、本1冊買ったりして自分でやれば20万円の仕事をしたのと同じです。そう考えたら本の購入費用や作成の手間なんかは苦にもならないはずです。

といっても、依頼したら手間がかからないのと独自のノウハウも持っていますので、そういう利益を得ることはできます。

そして、養育費の差押えに関しては、これが一番おすすめ。

主婦でもできる!養育費の差押えバイブル

調停調書や公正証書で、取り決めがされた養育費を滞納された場合の強制執行の仕方が記載されたマニュアルです。

書類の雛形もあり、このマニュアルを参考にして書類を作成したら、自分で養育費の預貯金・給料の強制執行の手続きができます。

慰謝料等にも応用可。 素人が手続することを考えて書かれており、この詳しさは他にはありません。これで駄目なら、あきらめろレベルですよ。

 

上記の書類のほかにも、給料差押えの場合は、その会社の登記簿謄本が必要になります。

これは、法務局で取得することができます。基本料金は1000円なのですが、支店情報などである一定の枚数を超えると料金が追加になる場合もあります。この登記簿謄本は、相手が個人事業に雇われている場合は必要ありません。

ほかにも、あなたや相手の住所が債務名義と違っていたりした場合などは住民票や戸籍謄本が必要になることもあります。

さらに、相手の宛名を書いた長3型の封筒も求められることがあります。

これら、債務名義から始まる強制執行に必要な書類をそろえたり作成できたら、手数料(収入印紙)と必要分の切手とともに、相手の住所地を管轄する地方裁判所に強制執行の申立をしてください。

以上が、簡単ですが強制執行手続の仕方です。

給料差し押えの費用

給料差押え費用ですが、申立手数料自体は4000円(2009年時)です。
意外に安いですね。

これを収入印紙で収めます。

他には、第三債務者(会社)や債権者に文書を送るので切手代を用意しなければいけません。これが、特別送達を使ったりするので馬鹿になりません。
何円切手が何枚いるかは、裁判所で聞いてみてください。

とりあえず、裁判所でかかる費用はこれくらいです。1万円もあればお釣りはでるでしょう。

そのほかにも、執行文を付与してもらったり送達証明を取ったり、登記簿謄本や住民票などもいるということであれば、15000円(公正証書の場合。調停調書はそれより安い。)くらいは見ておいたほうがよさそうです。

養育費と婚姻費用の給料天引き

養育費婚姻費用給料天引きとは、いったいなんのことなんでしょうか?

調停で養育費や婚姻費用の支払額や方法が決まったり、審判が下りた場合は、それぞれ調停調書や審判書ができます。

それら以外にも、裁判での判決や強制執行認諾約款入り公正証書も含め、これらは債務名義と言いまして、もし、相手が養育費や婚姻費用を支払ってくれなかった場合、強制執行手続を取ることにより、相手の財産を差し押さえることができます。

その際、差し押さえるものとして最も有効なものは給料になります。
養育費と婚姻費用は、その他の慰謝料などの一般債権と違って、扱いが少し特別になります。

慰謝料などの通常の債権であれば、給料から税金と社会保険料と通勤手当を差し引いた金額の4分の1までしか差押えできないのですが、養育費や婚姻費用は2分の1まで差押えすることができます。

また、給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1が33万円を超える場合は、33万円が差押えできない金額になります。もし、税金と社会保険料を引いた金額が90万円あるような高所得者であれば「90-33=57万円」で、給料の半分以上を差押えすることができます。

また、同じく養育費と婚姻費用は、慰謝料などの一般債権と違って、権利者の生活保持という視点から一度滞納したら、支払期限が到来していない将来の部分についても給与天引きと言う形で毎月引き落としで支払ってもらうことができます。

これは当たり前のような気がしますが、今までは滞納された分を差し押さえるということしかできず、1回1回その都度、強制執行をするか、ある程度滞納分がたまったら強制執行をするしかできませんでした。

これだと、権利者の生活がおびやかされるということで、法律が改正されました。

なので、今回、強制執行をすると、毎月決まった養育費や婚姻費用が、差押禁止の上限の範囲内にあれば、支払い義務者の会社のほうから振込等で、毎月あなたに支払われることになります。

といっても、少しだけ面倒くさい問題があります。
それは、強制執行の手続を取っただけだと、裁判所から会社に差押えの命令が出てるだけなので、最終的にはあなたと会社でどういう風に支払ってもらうか協議をし、合意する必要があります。

まあ、たいていはスムーズにいくでしょうけど、中には苦労する場合もあるかもしれません。たとえば、支払い義務者自体が会社を経営していて、そこの役員報酬だったりするような場合がそうですね。

話は変わりますが、会社と書きましたが、もちろん公務員でも同じですので、ご安心ください。

また、この給料天引きの強制執行ですが、ひとつ重要な注意点があります。
それは、支払う側の人の会社での立場が危うくなる可能性があるということです。
特に、公務員なんかは、給与差押えされたら「依願退職」を強く押されるみたいです。

もちろん、一般企業でも、給与が差押えされるなんて事はいいことではありませんので、リストラ候補に挙がったり、出世レースのライバルに蹴落とされたり、場合によっては会社に居づらくなって辞めざるを得なくなる可能性も大きいということを踏まえて、給料天引きの強制執行をするかどうか考えてください。

会社を辞めて給料をもらえなくなったら、もちろん給料からの差押えはできません。なので、いきなり「強制執行で給料天引きで差押えだ!」といきり立たずに、内容証明や手紙などで請求してみてください。

ちなみに、給料天引きで養育費や婚姻費用が支払われていたとしても、その会社を辞めたら、当然にそこで差押えは終わってしまい、再度強制執行して給料差押えする必要があります。

その際、新しい勤め先を教えてくれるとは限りませんし、調べるのも大変です。
なので、あくまで予防としての効果しかありませんが、調停調書や公正証書に、養育費や婚姻費用の支払い義務がある間は、住所や連絡先・勤務先を通知するような通知義務の条項を入れておいたほうがいいでしょう。

ということは、会社を辞めるとか辞めないとか以前に、そもそも養育費や婚姻費用の支払い義務者がどこに勤めているか分からなければ給料天引きの差押えもできないということになります。なので、勤め先は必ず押さえるようにしておきましょう。

と、養育費や婚姻費用の給与天引きの強制執行について色々書きましたが、制度自体は非常に優秀だと思いますので、やむをえない場合は給料差押えの強制執行を検討してみてください。

給料差押えが成功したら

給料に強制執行をかけて、差押えが成功したら、後は、自動的にあなたに支払われるかというとそうではありません。

差押えがうまくいったら、お金を支払うようにあなた自身が直接会社と話をしないといけません。ちょっとめんどくさいです。この際、たいていは会社に身分証明などを求められるでしょう。この辺は、あなたと会社の話し合いです。

養育費の給料天引きであれば、どの口座に振り込むかなどの話も必要になると思います。

で、一定の間隔で、取立届を裁判所に提出します。そして、最後まで取立が完了したら取立完了届を提出します。取立届の書式は上記の本にも載っていますし、簡単な書面なので、裁判所で聞いてもすぐ作成できます。

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